8 3次元音空間収音・再生システム



  音空間の精密収音・再生

    臨場感ある音響システムの中で一般に販売されているものに5.1chサラウンドが挙げられますが,これは収音した現実の音を忠実に再現しているわけではなく,人間の心理的な錯覚を用いて,臨場感のある音空間を再生しています.本研究室では,収音した音空間を忠実に再現することで,より臨場感の高い音響システムを実現することを目的とし,その一環でSENZIおよび高次アンビソニックスを研究しています.

    【3次元音空間収音・再生システムの分類】
    分類 説明
    マルチチャンネル音響
    ある方向の音を,その方向にあるスピーカーで再生する手法(例:5.1chサラウンド,22.2chマルチチャネルサラウンド)
    バイノーラル・トランスオーラル録音再生
    鼓膜上の音圧を制御する手法(例;伝達関数合成法,ダミーヘッド録音)
    音場再現技術
    領域の音圧を制御する手法(例:波面合成法,高次アンビソニックス)
  SENZI(千耳)

    人間は2つの耳からの入力のみで音の方向や響き,高さの違いなどを判断しています.これは裏を返せば,耳元に入ってくる音を忠実に再現すれば,立体的な音をヘッドホンなどの簡単な機器で聞かせることができるということです. SENZIは,たくさんのマイクロホンを設置したマイクロホンアレイを録音したい環境に設置し,録音した音を離れた場所に伝送して,その音の方向,響き,高さなどを忠実に再現して空間を超えてたくさんの人に再現する技術です.実際に252個のマイクロホンを使った録音用球状マイクロホンアレイを構成し,聴取者の頭部運動にも対応した適切な音空間情報を再生するプロトタイプシステムの開発を進めています.


     高次アンビソニックス音空間再生

    音空間を物理的に再現するためには,あらゆる方向の音圧を測定する必要あります.しかし,データの取り扱いが難しくなります.高次アンビソニックスでは,収音した音空間を球面調和関数と呼ばれる関数で表現することで,音空間を高精度で再現することが可能となっています.しかし,スピーカの配置を球状にしなければならないという制約があります.本研究室では,球状以外のスピーカ配置でも高精度な音空間再生を行うための研究をしており,また,その実証として,32chのスピーカアレイを用いた4次のアンソニックスを実現する音空間再現システムを構築しています.

図.高次アンビソニックス音空間再生 

   図.32ch音空間再生システム



Last update: 2014.9.18