電気通信研究所における歴史
音響情報システム研究分野

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・曽根研究室(昭和56年〜平成11年)
 昭和56年4月に通信工学科通信方式学講座の曽根敏夫教授が電気通信研究所に移り,本研究部門を担任した.それに伴って,研究の重点は曽根教授が専門とする心理音響学,或いは,聴覚情報処理に移った.昭和62年2月から平成元年3月までは香野俊一助教援(現,東北科学技術短期大学教授)が,昭和62年6月からは鈴木陽一助教授(平成元年3月までば大型計算機センター助教授)が加わった.
 ディジタル信号処理理論を適用した音場および音信号の制御が本研究部門の主要な研究テーマになっている.
 人間が音を聞いたときに,音の大きさ(ラウドネス),高さ(ピッチ),音色が知覚される.また,両耳に入る情報を利用して,音源の位置を判断したり,雑音の中から必要な音たけを聞きわけることもある程度は可能である.
 本部門では,聴覚を通してもたらされる情報が音のどのような特性に担われているのか,また,聴覚はそれをどのように抽出し,処埋しているのか明らかにするため,ラウドネス,音色および音像定位の研究を行なっている.
 音色知覚過程の研究では,聴覚が音の物理的スペクトルを主観的スペクトルに変換し,それが音色知覚の直接の入力として用いられるとの仮説を設けた.仮説の正当性を実証するため,聴覚末梢系に存在すると考えられる帯域フィルタの特性を推定し,成分音間の相互マスキングを考慮したマスクトスペクトルの概念を導入して,それと,音色知覚空問との対応を求める研究を進めている.
 音像定位については,音源から外耳までの伝達関数に着目し,水平面および正中面での定位,音源までの距離を知覚する距離定位の研究を行なって成果をあげている. ラウドネスの研究では,聴覚の基本特性としての等ラウドネスレべル特性を精密に計測する国際プロジェクトに貢献している.その他,音色知覚におげるマスクトラウドネスの性質を利用し,騒音下での音質補償回路の設計法や,ラウドネス補償型補聴器を開発してきた.さらに,三次元音場の精密な模擬法を研発している.これらは,高度な音響通信システムの実現を目指した研究の一環である.
 我が国の生活環境における音響暴露を精密に調査し,その影響の評価を行なって,世界的に注目される資科を作成した.さらに,音環境の聴覚への影響,快適な音環境を目指した騒音の能動制御なども研究テーマである.
 このように,本研究部門は通信システムにおける端末としての人間の情報処理過程の解明と,その性質を利用した音信号の制御および快適な音環境の実現を研究テーマにしてしている.

※以上,東北大学電気情報系創立75周年記念誌「ANTENNA」の記載を,一部補筆して掲載