我々は,音を聞いた時に,高さ,音色だけでなく,聞こえる方向や距離を両耳に到来した信号から知ることができます. この能力を 音像定位能 といいます.たとえば,左の図のように, 後ろから呼びかけられればその音が後ろから到来したと知覚できます.
これは,聴覚が,音源から両耳に届く音の変化や差異を知覚していることによるものと考えられています. 音像定位の物理的要因を解明し制御できれば,より厳密に音場を再現することが可能です.
頭部伝達関数のデータベースへ
図.頭部伝達関数測定のための スピーカアレイ
頭部伝達関数は,方向ごとに特性が違います.また, 頭の大きさや耳の形状は人ごとに違うので,個人ごとにも違います
そこで,我々の研究室では,右図のような, たくさんのスピーカを球状に並べた装置を用いて, 100人以上の頭部伝達関数を測定しデータベース化し, その特徴と身体形状の関連性などについて解析を行っています.
頭部伝達関数の個人性は,頭の形状や, 特に耳の形状に大きく左右されることが分かっています. そこで我々は,頭部伝達関数が頭部形状とどう関連しているのかを調べるため, 頭部の長さや耳介の位置を変化させたり,下図のように耳介形状を変化 させた時の頭部伝達関数の変化についてシミュレーションによる解析を 行っています.
図.耳介形状による頭部伝達関数解析結果の変化(左:耳介なし,中:耳介の凹凸を埋めたモデル,右:疑似頭の耳介モデル)