Last update: 2001/3/6
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測定条件

頭部伝達関数の測定は,清水建設技術研究所の無響室において1996年に行われた. 測定系を以下の図1に示す.被験者は,グラスウールのシートでできた無響室の 床に置かれた,ヘッドレストのついた座椅子型の器具の上に足を伸ばして座った. 無響室にとりつけられたトラバーサは,任意の角度に回転させることが可能で, そのアームにとりつけられたスピーカは,アームに沿って動かすことができる. 結果として,スピーカを,被験者を囲む上半球(半径:1.2 m)上を動くことが可 能である.

HRTFの測定系
図1:HRTFの測定系
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インパルス応答測定の音源信号には,時間引き延ばしパルス を用いた.被験者の両耳に,小さなエレクトレット型のマイクロホンを,ピアノ 線を用いて固定した.マイクロホンの出力は,アンプによって増幅された後, A/D変換されてDSPにおいて逆フィルタを畳み込んだ.サンプリング周波数は44.1 kHzであり,それぞれの測定点において8回の同期加算を行った.

測定内容

音源位置
図2:HRTFを測定した音源方向(聴取者の上から見たもの)
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このような条件で,3名の男性被験者の頭部伝達関数を測定した.音源の位置は, 上の図2に示された●の点である.仰角により設置する音源の角度間隔を変えた. その概略を表1に示す.結果として,合計454点の頭部伝達関数を測定した.測定 の間,被験者には動かないように指示をしたが,全方向の頭部伝達関数を測定す る間に8〜9回の休憩をはさんだ.それらの休憩により,被験者の頭部の位置が変 化しないよう配慮した.被験者1人あたりの測定時間は約4時間であった.

表1:HRTFの測定方向の仰角による変化
仰角 [°]角度間隔 [°]測定点数
0572
10572
20572
30660
40660
50845
601036
701524
803012
90---1
454

窓かけについて(01/5/29追記)

測定された各インパルス応答に対して,512ポイント長の矩形窓を適用して切 り出しを行った.このとき,インパルス応答の最大値が窓の中心付近となるよ うに窓の位置を合わせ,かつ,左右耳までの経路差によって元から存在する相 対的な時間差(位相差)は保たれるようにした.具体的には以下の通りである.
  1. 基準方向として最も遅延時間が長いと思われる,耳と反対方向のイ ンパルス応答に対して,その最大値となるところに矩形窓の中心を合わせ窓をかける.
  2. 他の方向については,窓の位置を aのものと同じにする(したがって必ずしも中心が応答の最大値の位置とはな らない)ことで,各応答間の相対的な時間差が変わらないようにした.

参考となる文献

  1. たとえば,城戸健一 他,基礎音響工学(コロナ社)
    …音響学一般
  2. たとえば,J. Blauert,森本政之,後藤敏幸 編著,空間音響(鹿島出版会)
    …HRTFの定義,聴覚における空間知覚について
  3. Yôiti Suzuki, Futoshi Asano, Hack-Yoon Kim and Toshio Sone, "An optimum computer-generated pulse signal suitable for the measurement of very long impulse responses," J. Acoust. Soc. Am., 97(2), 1119-1123(1995).
    …時間引き延ばしパルスについて