8 我々が開発した津波警報音
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背景

写真
 東日本大震災以降,大津波のような重大な事象に対する警報をいかなる状況でも瞬時に伝えることのできる手段が強く求められています。
 音による伝達は直感的に理解でき,かつ拡声音を用いれば特別な携帯情報機器などが不要で誰にでも情報を伝えることができるという大きな利点を持っています。しかし,音声だけに頼るのでは,音量が小さかったり騒音があったりすると内容が聞き取れない場合も出てきます。現在,多くの地方自治体では大津波警報に既存のサイレン音を使っていますが,サイレン音は鳴らす回数や時間間隔によっては別の意味になることもあり,必ずしも有効に機能していないようです。
 このような背景を踏まえると,「大津波警報専用のサイン音」(大津波警報音)が必要だと考えられます。そこで私たちは,災害時の一刻を争う緊迫した環境の中で,小音量でも,ある程度の騒音があるなど条件がよくない場合でも,聞こえてさえくれば「大津波だ!」と瞬時に認識することが可能なサイン音(大津波警報音)の開発を目指した研究を進めてきました。


開発した津波警報音の特徴

(1) 屋外で長距離を伝わる際の様々な妨害要因に負けない(頑健である)こと
 屋外では,距離に応じて音が小さくなり,複数のスピーカタワーからの音が混ざり合い,音が聞き取りにくくなる可能性が高まります。また雨風や交通などに伴う環境騒音も音の聞き取りを妨げる妨害要因となります。これらの妨害要因の影響が強いような劣悪環境においても,聴感上,意図した警報音であると認識できる音にする必要があります。
 そのような音とするのに必要な条件を探るため,屋外フィールドで何度も聴感実験を実施して改良を重ねました。実験の結果,開発した津波警報音は,複数のスピーカタワーからの音が混ざり合う影響を吸収することができるのみならず,遠くまで頑健に伝搬が可能な特徴を持つことが明らかになりました。

(2) 適切な緊張感を与えることができる
 津波警報音は,危険性や緊迫感を喚起させるのと同時に,びっくりしすぎて冷静な避難行動を妨げるほどの過度な緊張感は与えないような音でなければなりません。この観点から,因子分析などの高度な分析に基づく感性評価実験を重ねて,緊迫感を強調しつつびっくりしすぎない警報音を作りました。


詳しくは,以下の文献をご参考下さい。

[文献]
崔他,長距離伝搬に頑健な津波警報候補音の作成,日本感性工学会論文誌,13(3), 459−469 (2014)


Last update: 2015/11/15
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