8 ディジタル補聴技術の開発・評価



 CLAIDHA


    私たちが外界から受けている重要な情報のひとつに音があります. 聴覚に障害を受けた場合,補聴器を用いて聴力を補います.

    耳の聞こえの悪い人(難聴者)は耳の聞こえが正常である人(健聴者)と比べて, 音が聞こえ始める音圧レベル(最小可聴値)が違いますが, もうこれ以上大きくて聞きたくないという音に対しては, 健聴者とほぼ同じ音圧レベルになるという現象があります.

    このことに着目して開発されたのがディジタル補聴器CLAIDHAです. この補聴器では,入ってきた音を分析し,これを基に, 難聴者が健聴者とほぼ同じ音の大きさに感じるようなディジタル信号処理を行っています.



両耳分離補聴


     図.両耳分離補聴の概要
    
    補聴の方法のひとつに,高い音の成分と低い音の成分を左右の耳に分けて入力する “両耳分離補聴”という方法があります.本研究室では,この両耳分離補聴の効果, 及び実用化に向けての研究を行っています.

    私たちの耳の中の“蝸牛”というところでは,耳に届く音がどのくらいの高さなのか分析しています. 加齢により蝸牛の機能が低下すると,低い音によって高い音がかき消されやすくなり, 言葉の聞き取りが難しくなってしまいます.

    研究の結果,両耳分離補聴は周波数の聞き分けや,時間的に連続する音を聞き分けることが 困難である難聴者に対して有効なことが示されました. また左右の耳に入力される音の時間をずらすことにより,この補聴方法で問題だった 正面方向の音像の知覚を改善できることを示しました.



音声を聞き取る能力の評価


     図.親密度別単語了解度試験用音声データベース
    
    聴力がコミュニケーション手段であることばの聞き取りに多く 用いられることを考えると,実生活での音声の聞こえを評価する検査法が重要となります.

    本研究室では,“音声を聞き取る能力”を評価する,新しい聴力測定方法について研究を行っています. 音の大きさが同じであっても,そのことばを知っているかどうかで聞き取り易さが違います. そこで,なじみの程度を表す親密度という尺度で言葉の難しさを合わせた, 単語了解度試験用音表“FW03”を開発しました.実際に“FW03”を用いた試験が実施され始めています.


Last update: 2005.11.15