あらかじめ用意した複数人のHRTFを用いて仮想音像を作成し,
その中から聴感上最も定位感の良い音像をトーナメント方式によって選択する方法を検討しました.
この方法は測定の制約なく短時間で優れた定位感を持つHRTFを取得することができます.
‐個人化の方法‐
複数のHRTFからそれぞれ合成した仮想音像を聴取者に2つずつ提示し,あらかじめ指定された
音像の軌道に近いものを選択させます.この選択をトーナメント方式で行い,最も定位感が良かった音像が残るまで
繰り返します.最も成績が良かった音像のHRTFが本手法によって個人化されたHRTFとなります.
本手法によって個人化されたHRTFを使った際に,
どの程度の定位精度を持つかを以下の3つの条件で定位実験によって検討しました.
- 本人のHRTFを用いた条件(Own条件)
- トーナメント方式で個人化されたHRTFを用いた条件(Individualized条件)
- トーナメントで一度も勝ち抜けなかったHRTFを用いた条件(Away条件)
それぞれの条件で前後誤判断率(提示した音像と知覚した音像の前後が逆になっている割合)を左図に示しました.
この実験結果から,定位感の良い音像をトーナメント方式によって選択することで前後誤判断率は改善し,利用者本人の
HRTFと同程度の定位精度を持つHRTFを特定することができました.
|