Last update: 2001/3/6
  8 ブロックされた耳で計測したHRTFについて


本稿で紹介する頭部伝達関数の特徴は,被験者の両耳に,外耳道入口をふさぐ耳 型を装着し,外耳道内への音の伝搬を防いだ状態で測定されたことである.次節 で,このことについて説明する.

Møllerらは,バイノーラルあるいはトランスオーラル再生において,聴 取者および聴取条件の違いを補正する手法について検討を行っている( 参考文献はこちら).その結果,彼らは,ブロックした耳で 測定された頭部伝達関数は,通常の(耳をふさがない)状態で測定された頭部伝達 関数よりも個人性の影響が少ないと結論づけた.また,外耳道入口から鼓膜面ま での伝達関数は個人性が高く,それが自由音場からヘッドホン聴取状態への補 正を難しくしていると述べている.また,Møllerは,適切なヘッドホン の使用すれば,ブロックした耳で測定された頭部伝達関数は,ヘッドホン聴取状 態の補正に有効であると述べている(参考文献はこちら). このことから,本データベースは,特にバイノーラル再生の補正に有効にはたら くと考えられる.

参考となる文献

  1. Henrik Møller, "Fundamentals of binaural technology," Applied Acoustics, 36, 171-218(1992).
  2. Henrik Møller, Dorte Hammershøi, Clemen Boje Jensen and Michael Friis Sørensen, "Tranfer characteristics of headphones measured on human ears," J. Audio Eng. Soc., 43(4), 203-217(1995).
  3. Henrik Møller, Clemen Boje Jensen, Dorte Hammershøi and Michael Friis Sørensen, "Design criteria for headphones," J. Audio Eng. Soc., 43(4), 218-232(1995).